老後資金って本当に2000万円必要?計算方法や根拠を解説
皆さんは「老後2000万円問題」をご存知でしょうか。
2019年に公表されたある報告書を発端にした騒動のことです。
この報告書の内容に対して、日本の年金制度を不安視する声をはじめ、さまざまな意見や議論が交わされることとなりました。
この記事ではそんな「老後2000万円問題」について、「2000万円必要だ」と言われるようになった理由、また、老後資金対策を行う方法など幅広く解説します。
目次
老後2000万円問題とは
老後2000万円問題とは、2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が発表した、ある報告書をきっかけとした議論のことで、多くの国民が自身の資産形成に目を向けるきっかけとなった出来事です。
ここでは、老後2000万円問題について「騒動のきっかけ」や必要な老後資金が「2000万円」とされた所以について詳しく解説します。
老後2000万円問題の概要
老後2000万円問題のきっかけとなった、金融庁の審議会「市場ワーキング・グループ」の公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」における試算では「年金を収入としている高齢夫婦世帯は毎月およそ5万円の赤字となる」とした上で、「老後の資産形成にはおよそ2000万円必要になる」とされていました。
この内容について、国の年金制度を不安視する声や、そもそも2000万円という額の算出方法を疑問に感じる声も上がり大きな波紋を呼びました。
このように、世間では「5万円の赤字」や「2000万円の老後資金」など数字が大きくクローズアップされましたが、実はこのような反応は審議会の本来の意図とは異なるものでした。
報告書において具体的な貯蓄額を示した理由は、あくまで一つの事例を通し長期的な資産形成計画の重要性を訴えることだったのです。
つまり、巨視的な視点で提言を行なうはずが、「老後には2000万円必要である」という情報のみが独り歩きしてしまいこのような騒動に発展したのでした。
本当に2000万円もかかる?「老後資金は2000万円必要」とされた根拠
「年金を収入としている高齢夫婦世帯は毎月5万円の赤字が出る」「老後に資金が2000万円必要になる」と聞き、懐疑的な印象を抱いた方も多いのではないでしょうか。
そこで、ここでは「老後資金は2000万円必要」とされた根拠を解説します。
報告書内では、厚生労働省によって発表されたデータに基づいて試算されています。
「高齢夫婦無職世帯」は以下の条件に基づき算出されました。
- 夫65歳以上、妻60歳以上
- 夫婦のみの無職世帯
この条件に当てはまる世帯の実収入と実支出の平均値を計算し、実収入の値(209,198円)から実支出(263,718円)を引いた差額54,520円を「月当たり5万円の赤字」と表現しています。
また、この赤字額54,520円を30年分(360ヶ月分)掛けた、およそ1962万円を「老後資金2000万円」と表現していました。
ただし、これはあくまでモデルケースを想定しただけであり、収入・支出の状況やライフスタイルによって大きく異なります。
自分に必要な老後資金を計算する計算方法
ここでは老後に必要となる資金の内訳を総務省統計局の発表した「家計調査報告(家計収支編)2021年(令和3年)」をもとに解説します。
「食費」や「住居費」「光熱費」などの生活費や、保健医療費などを合算した月あたりの支出は、
- 65歳以上の夫婦のみの無職世帯で、224,436円
- 65歳以上の単身無職世帯で132,476円
でした。
これらの費用を自身の月あたりの年金で引いた額が月ごとに必要となる老後資金です。
また、葬儀費用なども必要となります。
葬儀費用は、「葬儀」「供養」などにかかる費用を合算するとおよそ100~120万円ほどと言われています。
「人生100年時代」に突入した現代では、仮に65歳で定年退職したと想定すると、老後に必要な資金は以下の式で算出することができます。
老後に必要な資金=(月あたりに必要となる額)×420+(葬儀費用など)
※(35年=420ヶ月)
老後資金対策2つの方法
ここでは老後資金を確保するための対策を3つ紹介します。
NISA・つみたてNISA
NISA(少額投資非課税制度)とは、18歳以上の個人投資家向けの投資制度です。
NISAは一度にまとまった額を投資する一括投資です。
投資可能な額の上限は毎年120万円で、最長で5年間は投資から得た利益が非課税になります。
つみたてNISAは定期的に決まった金額で購入する積立投資で、投資可能な額の上限は毎年120万円ですが非課税期間は最長20年間です。
長期的な投資形成を計画する場合は、少額から投資でき非課税期間の長い、つみたてNISAから始めると良いのではないでしょうか。
iDeCo
iDeCoとは(個人型確定拠出年金)とは、積み立てて投資を行い60歳以降に一時金として公的年金に付加して受け取ることができるという仕組みです。
積み立てることのできる掛金は職業や収入によって異なりますが、限度額の範囲内で月額5000円以上、1000単位から決めることができます。
年金とは別に受け取ることができる点が魅力的な投資です。
まとめ
「5万円の赤字が出る」「2000万円必要」などセンセーショナルな印象を与える報道を目にし、将来の資産形成に不安を感じた方もいたのではないでしょうか。
しかし、これらのあくまで一例であり自身のライフスタイルや状況に合わせて異なります。
これらの金額に捉われすぎることなく、自身の生活水準や状況に応じて必要な老後資金を把握し、長期的な投資を始めとした資産形成の計画を考えることが重要です。